|
2004年1月9日17時ちょうど、石破防衛庁長官は陸上自衛隊に対し、イラクでの復興支援活動を行うための先遣隊に派遣を命じ、同時に航空自衛隊の輸送機部隊に物資輸送本隊の派遣を命じた。
自衛隊の派遣は昨年のイラク戦争終結宣言以来、ずっと論議され続けていたが、とうとうそれが実行に移されるときが来たようだ。 そもそも、今回の自衛隊の派遣はどのように決まったのだろうか?まずは、その辺から検証していきたい。 最初のきっかけかと思われるのは、アフガニスタンでの戦争時にブッシュ大統領が発言した「Show the Flag」=旗を見せろ=人を出せ が原因ともいわれる。(もっとも、この日本語訳に関して賛否両論があるが…)イラク戦争とその後の戦後統治にアメリカは当初の予想以上に費用がかかり、その費用対効果が、アメリカの中東における石油権益のバランスシートを切ってしまったため、日本をはじめ西側同盟諸国に急に協力を要請しだしたというのが本音だろう。 イラク戦争開戦時の時に皆さんよくご存じだろうが、アメリカは国連をはじめとする世界各国からの非難を押し切り、イギリスと共に参戦した。その際は国際社会に対し、イラクと国際社会はまるで関係ないかのように、アメリカが全てやるかのような自信に満ちていた発言を繰り返していたにもかかわらず、この期に及んでブッシュ大統領は世界各国の協力を求めはじめたのだ。 では、反ブッシュを掲げる場合はイラクに自衛隊を派遣しない方が良いのか、といわれると、また難しい問題である。これにはいくつかの理由がある。一つは当然人道的な理由である。イラクは報道されているように、過去の経済制裁と戦争による混乱から経済・社会・治安状態は不安定でライフラインの整備、教育・衛生状態などに大きな問題を抱えている。 一応、先進国に名前を連ねている日本としてはイラクの悲惨な状況を手をこまねいてみているわけにはいかない。だからといって、金だけ出したのでは湾岸戦争時の教訓が全くいかされないことになる。湾岸戦争時日本は臨時赤字国債を発行してまで2兆円もの費用を負担したにもかかわらず、「日本は金だけ出して、血は一滴も出さない」と批判を受けた。 たしかに、先進国として恥ずかしくない本当の国際協力を目指すのであれば、金だけではなく人材の投入を行うことは昨今の国際情勢から考えても不可避だろう。
では、カンボジアのPKOの時などのように文民警察官や活動家を送り込むと言うことで対応できるかといわれたら、正直不可能だろう。イラクの治安情勢は極めて悪い状態が続いているのは周知の通りだ、現に昨年には日本人外交官が射殺される事件も発生している(この事件に関してのきな臭い話題はここではおいておくことにする)。そのような場所に文民警察官、ましてや一般市民からなるNGOの人間が出向いていっても、生命の危険にさらされることは必至である。もちろん、今現在イラクで活動しているNGOは存在しているわけだが、彼らは相当な覚悟でイラクで活動しているに違いないと思う。 結局のところ、この不安定な治安の下で復興支援活動を行える組織と言ったら自衛隊しか出てこないという結果になる。自衛隊ならば、一応武装はしているわけで、自分たちのみを自分で守ることもできる(はずである)。 しかし、ここで問題になるのはご存じ憲法9条。自衛隊は海外に派兵することは基本的にできないのである。もちろん今までゴラン高原などに自衛隊をPKO活動として海外に派遣したことは数回の経験がある。しかし、今回のイラク派兵はこれまでのPKO活動などとは大きく異なる点があるのだ。それは、前述もした治安の悪さである。これまでのPKO活動地でも当然治安が良好な状態とは言い難かったところもあるだろう、しかし今回のイラクに関してはその程度がはるかに深刻である。
フセイン政権の崩壊と共に、流出した武器、そしてフセイン政権の残党が所有する武器の数々は復興支援の活動にとって大きな脅威となるだろう。たかが武装勢力とはいえ、使用する武器はロケット砲や強力な爆弾などであり、しかも自爆テロのように自らの命は省みず攻撃を仕掛けてくるケースも多い。 このような状況下に派遣する場合は、最終的に活動の中で「戦闘行為」が行われる可能性が高い。まぁ、これは武装勢力などから攻撃されれば当然に応戦するであろうから、当たり前のことである。しかし、日本はこの「戦闘行為」を日本国外で防衛のためでは無く行うことに関し、大きな問題を持っている。 賛否両論はあるかもしれないが、仮にこの「戦闘行為」に関して、自衛隊の支援活動に際してやむを得ないものだから、憲法上問題なしとしたことにしよう。だが、それでもまだ問題が残るのである。 今回の派遣はこれまでも繰り返しているようにアメリカの圧力によるところが大きい、よってイラクでもアメリカ軍やそれに協力する西側諸国の軍と共同で行動することも多いだろう。実際、これまでの新聞に目を通すと、米軍の兵員輸送を行ったり、オランダ軍との共同警備行動なども予想されるようである。 この、各国軍隊との共同行為という点についてにほんは「集団的自衛権の禁止」というこれまでの姿勢から、大きな問題があると言えるだろう。憲法上日本は他国の軍隊と共同で武力行使を行うことはできないとされてきた。今回、復興支援を名目にこの原則を破ることができるのか否かは大きな問題となるところだろう。 では、最終的に自衛隊を派兵するのは正しいのか、誤っているのか?管理人個人の考えとしては、やむを得ない状況なので許すという気持ちが大きい。この状況で文民が行って、多数の犠牲者が出るのならば、戦闘を覚悟している自衛隊が行った方が良いという気持ちである。しかし、自衛隊には憲法上の縛りが多いのも事実。これをどうするかというのが今後の課題になっていくだろう。 このイラク派兵後、憲法改正が議題に上るのか、それとも自衛隊に変わる国際貢献専門部隊の創設が議論されるのか、注目していきたいと思う。 |